Sense Lack Project

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ここでは、ボイスドラマに仕上げた作品の脚本を公開しています。
読みながら聴いてみたり、実際にやってみたりしてみてください。
著作権は放棄していませんが、趣味の範囲での創作活動のためならご利用くださってかまいません。
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#001 『 さよなら、明日 』  <読む>

 登場人物 : 2人 (男2名)
 完成作品 : 約15分(SE込み)  

 配役
 江崎 (ezaki)       男性
 桑島 (kuwashima)  男性


 SE:車の音
 SE:クラクション
江崎「くわしま!桑島、乗れよ」
 SE:後方から近寄って抜き去る一台の車。
 SE:ドアの音&座る音
桑島「お、えざきちゃんどうしたの?左ハンドル?」
江崎「まぁな」
 SE:ドアを閉める音
 SE:走り出す車
桑島「いいね、左ハンドル」
江崎「だろ?」
桑島「サングラスして?」
江崎「まぁ、な」
桑島「気取って、窓にひじ置いて?」
江崎「まぁ、な」
桑島「かっこつけやがって」
江崎「ま・あ・な」
桑島「エアコン付いてりゃ、言うことねぇのに」
江崎「窓が開くだけマシだと思え」
桑島「あー、あぢぃ」
江崎「夏だからな、あきらめろ」
桑島「あー、せまぁ」
江崎「文句いってんじゃねーよ」
桑島「あー、エンジン音軽っ」
江崎「うるせーよ」
桑島「ほんとだよ、うるせーよ」
江崎「文句たらたらだな」
桑島「夏だからな。あ、そーだ、ちょい遅れるって、さっきまでなにやってたよ?」
江崎「ちょっと私用でな。語ってた」
桑島「なにを?」
江崎「なんでもねーよ」
桑島「で、行きたい場所ってどこ行くの?」
江崎「だまって寝てろ」
 SE:走り去る自動車


江崎 タイトルコール 『 サヨナラ、明日 』


桑島「っふあぁぁぁ」
江崎「マジで寝るか?」
桑島「おはよ」
江崎「ほんっとどこでも寝られるその性格がうらやましいよ」
桑島「どこ?ここ?」
江崎「クイズ、じゃじゃん。」
桑島「なに?」
江崎「いいから。クイズです。」
桑島「はい。」
江崎「必ず来るはずなのに、絶対にこないもの。なーに。」
桑島「そりゃまずいだろ?」
江崎「え?なにが?」
桑島「そんな問題、お前さ、時間考えろよ。」
江崎「え?なにが?」
桑島「何時だと思ってんだよ。まだ、朝の9時だぞ?お前、マジやべぇって」
江崎「え?なに?クイズだろ?」
桑島「クイズとかいっちゃってさ、」
江崎「答えは?」
桑島「(おどろおどろしく)トンネルの出口」
江崎&桑島『こわーーー』
江崎「で、答えは?」
桑島「あした。とかいっちゃうんだろ?」
江崎「わりぃかよ」
桑島「別に? つーか、トンネルなげぇな、あ、見えてきた」
江崎「トンネルを抜けると?」
桑島「そこは?」
 SE:風のきれるおと
江崎&桑島『ゆきぐにでしたー』
江崎「ざんねーん」
桑島「雪ふらねぇかなぁー」
江崎「ふらねぇな、これじゃ」
桑島「めっちゃ天気いいし。雲ひとつ、ふたつあるけど、気持ちのいい青空だな」
桑島あくびする
桑島「で、どこまで行くんだよ。森しかねぇじゃん」
江崎「すぐそこだよ」
 SE:ウィンカー
無言で8秒車が走る。
 SE:サイドブレーキ
江崎「ついたぞ」
 SE:エンジン音切る
 SE:ドア開ける
桑島「なるほどね」
 SE:ドア開ける
江崎「覚えてんだろ?」
桑島「忘れるかよ」
 SE:草を掻き分けて進む足音
桑島「これ、まだ使えんのかな?」
江崎「おいよ」
 SE:ペットボトルを投げる&受け取る
桑島「ミネラルウォーターで呼び水とはね、」
 SE:注ぐ音
 SE:井戸ポンプ
桑島「おお」
江崎「出るじゃん」
桑島「やべぇ、ちょーつめてぇ。飲んでも平気かな?」
江崎「腹こわしてもしらねぇぞ」
桑島「オトナみたいなこといいやがって」
江崎「懐かしいな。何年たった?」
桑島「さぁな?」
江崎「なぁ、畑野んとこ行くか」
桑島「そうだな。あ、水ここでくんでいくか?」
江崎「そうだな、つーか、それでいいよ。そのペットボトル一本で」
 SE:井戸ポンプ
 SE:井戸ポンプ止める。
桑島「っつーか、こうやって見ると人口の池でも無駄にきれいだな」


江崎(N)「俺たちはふるさとに帰ってきた。
      中学校のグラウンドから見下ろす景色。
      けど、俺たちの村は、23年前、昭和の終わり。ダムの底に沈んだ。
      かやぶき屋根の家も、小学校も、駄菓子屋も文房具屋も、病院も。
      秋の収穫がいやになるくらい広かった、田んぼも、すべて、今はきらきらひかる水面の下にある。
      俺たちが過ごした場所。
      最後に残ったこの高台にある中学校も、廃校から24年。取り壊しが決まった。
      中学校の対岸。
      ちょうど反対側に、そいつは眠っている。
      何も知らずに、ふるさとがダムの底に沈んでいったなんて夢にも思わずに。

 SE:エンジン音切る
 SE:ドアを開けて、閉める2つ分
 SE:砂利道を歩く二人

江崎「ただいま」
桑島「かわってねぇな」
江崎「墓石はかわんねぇよ」
桑島「畑野、ただいま」

江崎(N)「俺たちは村のはずれにある、畑野の、畑野祐美子の墓に来た」

 SE:ペットボトルの水流れる音
桑島「江崎?」
江崎「ん?」
桑島「畑野ってさ」
江崎「うん?」
桑島「生きてたら美人になってたかな?」
江崎「さぁな。ライター持ってる?」
桑島「あるけど? ん。 興味ねぇの?」
江崎「死んだ人間をどうのこうの言ってもさ、もう、どうにもなんねぇだろ」
 SE:ライター使う音
桑島「線香持ってきてたのか」
江崎「こういうときだけは、ちゃんとしたいだろ?」
桑島「あ、俺やりたい」

江崎(N)「桑島が線香に直接、ライターで火をともす。
      少しだけ行儀の悪いそんなことをしておきながら、桑島は右手で仰いで火を消した。
      線香の煙が真直ぐ空へと昇っていく。

桑島「なぁ、江崎?」
江崎「なに?」
桑島「畑野がさ、お前のこと好きだって言ってた」
江崎「へぇ〜、いつ?」
桑島「中3の春」
江崎「なんで?」
桑島「しらねぇよ」
江崎「なんでお前知ってんの?」
桑島「直接聞いたから」
江崎「はぁ〜あ。そういうの言ってくれりゃいいのに」
桑島「口止めされてたからさ。っつーか、あいつお前に直接言ったんだと思ってた」
江崎「言われてねぇよ。っつーか言えるわけねぇよ」
桑島「なんで?」
江崎「俺、そんとき彼女いたから」
桑島「え?」
江崎「一瞬。な」
桑島「え?あぁー。」
江崎「一瞬だろ?」
桑島「あれな。ひでぇバツゲームだ」
江崎「うるせぇよ。先輩に失礼だ。卒業記念だからしかたねぇだろ?」
桑島「でも、卒業式のテンションで告られて、桜が散ったら、好きなひとできたから。って振られたんだろ?」
江崎「だから、先輩の卒業記念」
桑島「あれなかったら、畑野は言ってたんかな?」
江崎「あぁ?告白的なこと?」
桑島「そう」
江崎「ねぇな」
桑島「なんで?」
江崎「だって、俺には桑島のことが好きだとか言ってたから」
桑島「俺?」
江崎「うん。なんかフツーに」
桑島「いつ?」
江崎「中3の5月」
桑島「そりゃ、ウソだな」
江崎「なんで?」
桑島「だって、アイツ入院したの6月だもん」
江崎「じゃあ、どっちにしろウソだ、な」
桑島「そうかもな」
江崎「心配してくれてたんだろうな」
桑島「俺ら無駄にケンカばっかしてたからな」
江崎「あいつがいなかったら、たぶん、」
桑島「今の俺らも無いな」
江崎「ヒトの心配ばっかしてんじゃねぇよ、バカが」
桑島「中学も卒業せずにいっちまいやがって」
江崎「でも、たぶんさ、俺、畑野が生きてたら、桑島とは親友にならなかったと思う」
桑島「同感」
江崎「恋とか、なんかそういうの、今でもよくわかんねぇけどさ」
桑島「うん」
江崎「たぶん、あのときの俺は、畑野のこと好きだったんだと思う」
桑島「うん」
江崎「わらわねぇのな」
桑島「笑えねぇよ。身に覚えがありすぎて」
江崎「どうせ、アイツは笑ってんだろうな?」
桑島「爆笑だよ」
 SE:やや無言。セミとか。夏の音。

江崎「畑野が言ったんだ。クイズ。」
桑島「なに?」
江崎「『必ず来るはずなのに、絶対にこないもの。なーに。』って病室で」
桑島「畑野が?」
江崎「日に日に弱っていくの、実感してたんだろうな?
    笑って言うんだ。
    正解は『明日』。。。って」
桑島「・・・」
江崎「なんで? くるじゃん?明日? って俺が聞いたらさ、
    『こないよ。ぜったいこない。だって、明日は、12時こえた瞬間、今日になっちゃうでしょ?』って。
    ・・・。
    笑ってさ、なんか、ひっしぶっこいて、ほそっこい笑顔つくってさ、
    『江崎にはくるよ、明日。』って。
    あのタイミングで言うかよ。。。
    (ため息)」
桑島「・・・まさか?」
江崎「・・・そう、そのまさかの翌日。」

江崎(N)「畑野祐美子は深夜の病室で息を引き取った。
      明日が今日になるのも待たずに」

桑島「・・・」
江崎「・・・」
 SE:遠くで雷鳴
江崎「雨、ふるのかな?」
桑島「西の空が曇ってんな」
江崎「行くか」
桑島「そうだな」
江崎「またくるよ、畑野」
桑島「なぁ、江崎?」
江崎「なに?」
桑島「必ず来るはずなのに、絶対にこないもの。なんだと思う?」
江崎「明日。だろ?」
桑島「ぶー。」
江崎「え?」
桑島「畑野、言ったんだよ。『サヨナラ』って」
江崎「どういうこと?」
桑島「恋人にはオワリがくるけど、親友には、お別れはない。って」
江崎「ん?」
桑島「俺もよくわかんなくてさ。あいつ、何が言いたかったのか」
江崎「ん?あー。そか、そういうことか」
桑島「そ。そういうこと。つーか、今日やっと解けた。その答え」
江崎「だから、言わなかったんだ。どっちが好きとかつきあうとか」
桑島「だと思う」
江崎「親友、か」
桑島「その定義が一番しっくりくるよ。俺たち3人には」
江崎「『サヨナラ』」
桑島「『明日』か」
 SE:遠くで雷鳴
江崎「どしゃぶりになる前に逃げるか」
桑島「そうだな」
 SE:足音
 SE:ドア開閉2つ
 SE:エンジン音
 SE:一旦FO


江崎(N)「バックミラー越しに、畑野の墓がだんだんちいさくなっていく。
      中学の制服を着たままのあいつが、元気に笑って手を振っているような気がした。
      もし、あいつが生きてて、どんどんなくなっていくこの村を見たら、なんていうだろう。
      

江崎「なぁ、桑島?」
桑島「ん?」
江崎「畑野ってさ」
桑島「うん?」
江崎「もし生きてたら美人かな?」
桑島「んー。どーかな? あ、いや、美人。ぜってー美人。絶世の美女」
江崎「なに急に」
桑島「ほめとかなきゃさ、なんか大雨になりそうな気がした」
江崎「そういうの、逆効果なんだぜ?」
桑島「なんで?」
江崎「女心と山の空っていうだろ?」
 SE:雨ポツポツ
江崎「ほら、いわんこっちゃない」
 SE:雨音


 - END -


※使用している記号について
・SE …… サウンドエフェクト 効果音
・M …… 音楽 挿入曲  (文色では、演出上必要な場合にのみ記載。たいていの場合、音響の判断でつけるようにしています)
・(N) …… ナレーション  (文色では、演出上、モノローグ(独白)のような場合もある 今回の物語ではモノローグ的な演出)
・FO …… フェードアウト (効果音に関する指定)