Sense Lack Project

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ここでは、ボイスドラマに仕上げた作品の脚本を公開しています。
読みながら聴いてみたり、実際にやってみたりしてみてください。
著作権は放棄していませんが、趣味の範囲での創作活動のためならご利用くださってかまいません。
もしご利用になりたい場合は、メールでご連絡くださいね。

#003 『 レコードを聴きながら。 』  <読む>

 登場人物 : 2人 (男2名)
 完成作品 : 約7分(SE込み)  

 配役
 西園寺浩介 男性
 木村彰文  男性


電車が遠くを走っていく。
原付のエンジンを止めて彰文は足を進める。
ビニール袋に紙袋の入った袋の音がする。
アスファルト、タイル張りのマンションロビー。
エレベーターのボタンを押し、彰文を上へ運んでいく。
エレベーターを上がって、彰文がマンションの冷たい廊下を歩いていく。

彰文(N)タイトル:『レコードを聴きながら』 (エレベーターの中にいる間でもいいかも?)

チャイムを押す。
雑音交じりの浩介の声がする。
浩介「はい、」
彰文「コースケー、俺」
浩介「……なんだ、あきふみか」
彰文「あけて」
浩介「わかった、ちょっと待って」
外の空気は静かで涼しい。
鍵を開ける音がして、ドアを開く。
浩介「どしたの?」
彰文「浩介、暇だろ?」
浩介「あ、ごめんなさい、もううち新聞とってますんで、すいません」
 言いながらドアを閉める。
彰文「ちょちょっちょっちょっちょ」
 ドアが閉まる。
 ドアを叩く彰文。
彰文「浩介っ、こーすけー?」
 呼んでも返事が無い。
 チャイムを押す。
 押した瞬間にドアを開けて顔を出す浩介
彰文「なんだ、そこにいるんじゃん」
浩介「あのね、あきふみくん?」
彰文「なに?」
浩介「マンションなのよここ、集合住宅なのよ? 来るのはいいけどさ……?」
彰文「ふふん」
浩介「少しは時間考えてよ」
彰文「いいもん持ってきた」
 スーパーマーケットのビニール袋、細長い紙袋が入っている。
浩介「なに?」
彰文「いいもの」
浩介「(ため息)まぁ、いいや」
 ドアが大きく開いて
 彰文も入ってくる。
 スリッパを浩介が脱いで、
 ドア閉じる。
 彰文も靴を脱いであがる
彰文「おじゃましまー」
浩介「少しは時間考えてよ、隣の田中さんのおばちゃんから怒られたばっかりなんだから」
彰文「バイト休んだんだって?」
浩介「あー、うん」
彰文「グラス、ふたつ出して」
浩介「そこはさ、先に、俺の心配じゃないの?」
彰文「え?」
 グラスを食器棚から出して閉める浩介。
浩介「親友ならさ、『バイト休んだんだって?』の次はさ『大丈夫か?』くらいあるでしょーよ?」
彰文「あー、うん」
浩介「(ため息)」
彰文「でも、元気じゃん?」
浩介「あ、うん」
彰文「それに……、見たところ背中とかに悪いもん憑いてないから、大丈夫だ」
浩介「そっちの心配してねーよ。ったく。はい」
彰文「さんきゅ」
浩介「アキフミはそういうの見える人だっけ?」
彰文「いや?ぜんぜん?(座る)よいしょっと」
浩介「(ため息)」
 グラスをふたつ渡す浩介
 受け取る彰文
 彰文はグラスをテーブルに置いて、座る。
 浩介は冷蔵庫を開きながら言う。
浩介「なに飲む?、コーラくらいしか無いよ?今」
彰文「まぁ、良い、浩介よ、ちこうよれ」
 冷蔵庫を閉める。
浩介「なんだよ」
彰文「まぁ、座れよ、気にせずに」
浩介「俺ん家だから。俺が言うんだろ?そういうの?」
彰文「まぁ、いいからいいから」
浩介「っしょっと。(座る)なに?」
彰文「じゃーーーん!」(ビニール袋の音)
浩介「さっきも見たよ。なにそれ?」
彰文「『いいもん』」
浩介「『いいもん』、じゃなくてさ、紙袋開けてよ」
彰文「お前がやるのじゃ、浩介よ。おぬしのチカラが、おぬしのPOWERが必要なのじゃ」
 紙袋を渡される浩介
浩介「なに? ビン?」
彰文「あけたらわかるよ」
 紙袋を開ける浩介
彰文「どうよ」
浩介「おぉ、ワインじゃん?へぇ〜、焼酎派のアキフミがワインね?」
彰文「飲もうぜ」
浩介「なんだ、コルクじゃんこれ。座る前に言ってよ、もぅ」
彰文「だから言ったじゃん?
    『おぬしのパワーが必要なのじゃ』」
浩介「『おぬしのパワーが必要なのじゃ』   うるせーよ。よいしょっと」
 立ち上がる浩介
 食器棚の引き出しからワインオープナーを出して戻ってくる。
浩介「えーっと、(探している)つーか、ゲームやりすぎなんだよ。あ、あった。
    なんだっけ?アキフミがはまってるやつ」
彰文「ドリダン?」
浩介「そう、それ」
彰文「ドリームダンジョン、先月とうとう27出てさ」
浩介「なにがおもしろいの?アレの?」
彰文「夢があるんだよ。『ドリームダンジョンとうぇんてぃーせぶん』カミングスーン」
浩介「カミングスーンじゃねぇよ、もう出たんだろ?」
彰文「うん、先月の10日とか?」
浩介「ふ〜ん、っつーかもう27か?まだやってんの?」
彰文「うん」
浩介「でもあれ?クソゲーじゃん?なんかあんの?」
彰文「夢だよ、夢があるんだよ。」
浩介「どこに?」
彰文「しいていうなら…、」
彰文「『ゲームタイトル?』」
浩介「『ゲームタイトル?』 はいはい。はい、ワインオープナーですよ、勇者さま」
彰文「おお!これが伝説のワインオーープナーーー!」
 SE:!!!!
彰文「私はこれを捜し求めて旅をしていたのです、賢者様、これがあれば、これがあれば、
    っしょっしょ、あれ?おかしいな? これさえあれば世界が救われるのです!
    ティッティリーーー」
 SE:!!!!
浩介「はいはい。あのね、ぜんぜんあいてないからね?ワイン。それに、これ、逆」
彰文「残念だ、どうやら私は、真の勇者では無かったようです。はい、真の勇者さま」
浩介「これね、こっちを先にあげとかないと」
彰文「あぁ」
浩介「んしょっと」
 ワインのコルク空くさわやかな音
彰文「てぃってぃりー」
 SE:!!!!
浩介「っつーか、さっきからそれなんなの?変な音」
彰文「夢。」
浩介「は?」
彰文「ドリーム。夢がいっぱいつまってるんだ。このボタン押すと、SE、こっちの青いのが、SE、こっちの赤いの押したらSE。」
浩介「どこで手に入れたの?」
彰文「西の洞窟」
浩介「あ、そこのスーパーのガチャガチャね」
彰文「うん、駅の方の入り口とこにあったから、100円だったし。100円のわりにいい仕事してるよー」
 SE:!!!!
浩介「うるさいよ」
彰文「ごめん」
浩介「(ため息)もう……また、田中さんにおこられるよ……」
彰文「なにぃ!魔物が現れただと!SE」
浩介「聞こえるから」
彰文「ええい、たたききってくれよーぞー!SE」
浩介「うるせーよ!かせ!真の勇者はおれだSE」
彰文「おおお。さーせん(すいません」
浩介「うむ、よかろう(笑)」
彰文「バカがやっと悪乗りしてきたよ(笑)」
浩介「うるせー」
彰文「あ、そうだ、レコードかけていい?」
浩介「レコード?」
彰文「いいの入ったんだ」
浩介「いいけど?うるさくすんなよ?」
彰文「わかってるって」
 彰文はレコードデッキを触っている
 浩介は無言で SE を出す。
彰文「気に入ってんじゃん?それ?」
浩介「久しぶりなだけだよ、ティッティリーSE」
彰文「バカだな」
 SE:レコードの雑音
浩介「アキフミだからね、こんなの買ってきたの」
彰文「少しは元気出たみたいだな」
浩介「(笑)バカのおかげかもな」
彰文「っつーか、その勢いで田中さん家殴り込めばいいのに」
浩介「………」
彰文「………」
 無言になった二人に、静かな時間が訪れる。
 外で電車が走る音がする。
 レコードの雑音に混じって入れ替わるように、Mここから始まる
彰文「……すまん」
浩介「……勝てないよ、彼女には」
彰文「……ごめんな、俺が騒いだせいで、」
浩介「……いいよ」
彰文「……ごめん」
浩介「……もう、忘れたいんだ」
彰文「……ごめん」
浩介「……うん」
彰文「……そのせいで、カオリちゃんともわかれちゃったんだもんな」
浩介「その話はもうやめよう」
彰文「まだ、ひきづってんのか?」
浩介「(ため息)はやく忘れたいよ」
彰文「まぁ、飲むか」
浩介「そうだな。せっかく買ってきてくれたし、高かったんだろ?このワイン」
彰文「心配するな、給料の3か月分だ」
浩介「(おおげさに)へぇ〜、このワインが!すっごーーい」
彰文「大丈夫か?」
浩介「忘れたいんだよ(ちょっと怒って)」
彰文「はいよ」
 ワインを注ぐ音。
浩介「かせよ、手酌は無しだろ」
 ワイン2つ目。
彰文「カンパイ」
浩介「カンパイ」
彰文「いい、味だろ?」(味を強調して)
浩介「バカだな、アキフミ、ワインは香りだ……香りだ。……カオリだ……カオリ……」
    (妙に冷静に)ちょ、そこのクッション取って」
彰文「お?おう」
 SE:倒れこむようなドサっ
浩介「カオリーーーー」(クッションに顔をうずめて)
彰文「せっかく、俺が、『味』って言ったのに」
浩介「カオリーーーー」(クッションに顔をうずめて)
 SE:背中を軽く2度叩く
彰文「浩介、……まぁ、忘れようぜ、(笑)『となりのおばちゃんにボコられたとか』(笑いながら)」
浩介「こわかったよーーーー」(クッションに顔をうずめて)
彰文「ドンマイ」
浩介「ぜったいわかんねぇ、お前にはぜったいわかんねぇ」
彰文「いや、俺にもわかるよ、セブンのボスがそうだった、マジで」
浩介「小学校のときな、やったやった、ドリダンセブン」
彰文「なー、マジで無いって」
浩介「ひでぇよ、あれはひどい、」
彰文「直前のボスはレベル50で倒せるのに、攻略本に…、な、」
    『ラスボスはレベル90以上で望みましょう』」
浩介「『ラスボスはレベル90以上で望みましょう』ってそりゃねーよ」
    俺、アレでやめたもんな、RPGの類そっから一切やってないもん。」
彰文「浩介……泣いてたもんな、あのとき」
浩介「もう、トラウマだよ」
彰文「そりゃトラウマにもなるよな」
浩介「どの魔法もきかねぇし、」
彰文「うん」
浩介「格闘家も忍者も、回復役の魔法使いですら一瞬でやられちまってさー」
彰文「なー、それなのに、引っ越して来たマンションで。となりのおばちゃん、」
浩介「勝てねーよ、レベル200でも勝てねーよ」
彰文「なー、マジで無いって」
浩介「こわかったよーーーー」(クッションに顔をうずめて)
彰文「よしよし、大丈夫だ、大丈夫。もう、大丈夫だよー、ワイン飲もうねー」
浩介「う、うん」
彰文「飲もう」
浩介「飲む」
 グラスを持って、一気飲みする浩介
浩介「ぷはー」
彰文「うわー、ゼイタクー(笑)」
浩介「あ、冷蔵庫にさ、佃煮とちくわがあるわ」
彰文「おう、取ってくる。んしょっと」
 立ち上がる
 ごろごろする浩介
浩介「あーーー、もーーーだめだーーー」
彰文「ひっこさねぇの?」
 冷蔵庫を開ける音
浩介「ひっこせねぇよ。あった?青いフタの」
彰文「これ?」
浩介「それ」
彰文「なんで?ひっこせねぇの?」
 冷蔵庫を閉める音
浩介「あの日の……次の日だったかな?」
彰文「ん?」
浩介「隣に住んでる田中のおばちゃんさ、おかゆと、にしめ、つくってきてくれたんだよ」
彰文「まじで?」
浩介「『昨日は、ごめんなさいね』って、バンソウコウといっしょに」
彰文「そっか」
浩介「箸、その上」
彰文「ん」
 SE:箸を取る音
 SE:彰文もどってきてテーブルにタッパーとちくわの袋と箸を2つ置く
浩介「昨日はさ、その佃煮、『つくったから食べてみて、お口に合うかわからないけど」って」
彰文「ん、」
浩介「俺はいいよ。さっき食った、食べなよ」
 SE:箸の音
彰文「ん、んまいこれ」
浩介「その佃煮さ、ばあちゃんの味そっくりでさ。
    ダシ取ったあとの残りの昆布とかつお」
彰文「うん」
浩介「小さく切って、しょうゆとみりん、酒入れんのかな?」
彰文「うまいな、これ」
浩介「こっち来て、独り暮らし始めて自分でやってみたけど、違っててさ。やっぱ、なんか、違っててさ」
彰文「そっか」
浩介「3年前、ばあちゃんあっちいっちゃって。……それもう、食べらんないと思ってたから……。
   ……だから、引っ越せないんだ」
 SE:タッパーの蓋の音
浩介「もういらないの?」
彰文「冷蔵庫入れとくよ」
浩介「いや、ワインと一緒に今日、あけようよ。やっぱ俺も食う」
彰文「飯のおかずにとっとけよ」
浩介「そうじゃなくてさ、」
彰文「ん?」
浩介「空っぽにして、返したいんだ、そのタッパー。はやくかえしたら、その分はやく次のおかず食べられるから」
彰文「そっか」
浩介「それに、返すとき、やっぱ、嬉しそうにしてくれるんだ。それが俺もうれしくてさ」
彰文「浩介。」
浩介「だから、隣にあんまり迷惑かけたくないんだよ」
彰文「わりぃ」
浩介「いいよ。 なぁ?このレコードどうしたの?」
彰文「俺のお気に入りプラス、店長のおすすめ」
浩介「へぇ、めずらしいテイストだと思った」
彰文「まぁ、な」
浩介「いい曲だね」
彰文「やるよ」
浩介「え?」
彰文「レコード、やるよ、浩介に。気に入ってくれるだろうと思ってな」
浩介「え? あ。……あ、そっか。忘れてた。」
彰文「え?」(笑)
浩介「ワインに、レコード、あ、そういうことか」
彰文「ウソだろ?」
浩介「いや、最近、いろいろありすぎて、忘れてた」
彰文「じゃ、やりなおしだ」
 ワインを注ぐ音
浩介「あ、」
彰文「俺は手酌でいいの」
 ワインを注ぐ音
浩介「うん」
彰文「歌うか?」
浩介「いや、隣、迷惑だから」
彰文「だな。じゃ、」
浩介「うん」
彰文「ハッピーバースデー。おめでと」
浩介「うん、ありがと」
 グラスの音
浩介「(ため息)」
彰文「なに?」
浩介「でもなー、残念だー」
彰文「……」
浩介「今日みたいな日に、男ふたりきりってのが」
彰文「(笑)そりゃ、しょーがねぇよ」
 グラスの音

 --end--


『レコードを聴きながら』
キャスト
西園寺 浩介 さいおんじこうすけ …遠藤直哉
木村 彰文 きむらあきふみ …村上駿
以上でお送りしました。

#004との連作脚本になっています。


※使用している記号について
・SE …… サウンドエフェクト 効果音
・M …… 音楽 挿入曲  (文色では、演出上必要な場合にのみ記載。たいていの場合、音響の判断でつけるようにしています)
・(N) …… ナレーション  (文色では、演出上、モノローグ(独白)のような場合もある 今回の物語ではモノローグ的な演出)
・FO …… フェードアウト (効果音に関する指定)
・/ …… 台詞のカットイン (重ね入り)