Sense Lack Project

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ここでは、ボイスドラマに仕上げた作品の脚本を公開しています。
読みながら聴いてみたり、実際にやってみたりしてみてください。
著作権は放棄していませんが、趣味の範囲での創作活動のためならご利用くださってかまいません。
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#010 『 ぺんぎんになってしまいたいかもめ 』  <読む>

 登場人物 : 2人 (女2名)
 完成作品 : 約10分(SE込み)  

 配役
 ぺんぎん :  女性
 かもめ: 女性



ペンギン(N)
  「その日はずいぶんと空が穏やかで、青く透き通ってた。
  雨が続いてた季節の終わりに、だけど、夏の始まりを予感させる、そんな空だった。
  見上げた空の向こうに、規則正しく飛び回るカモメたちの群れが見える。
  たぶん、魚の群れでも見つけたんだと思う。そんな感じ」

 *お腹がなる。

ペンギン(N)「なんか、お腹すいてきた。だけど、そのとき、」

 *どさ、どさ

ぺ「きゃっ、なに? びっくりしたぁ。」

ペンギン(N)「真っ青に広がってる海みたいな空から、魚が2匹落ちてきた」

タイトル『ペンギンなってしまいたいカモメ』

 *カモメの鳴き声がして、羽の音が迂回して再度近づいてくる。

ぺ「あぁ、」
か「こんにちは、ごめんね、ペンギンさん」
ぺ「なぁんだ、かもめさんだったの。びっくりした〜」
か「ごめんね よいしょっと。おどろかせちゃって」
 *かもめ着地する
ぺ「も〜、びっくりしちゃった。
  ぼお〜っとしてたら、空からお昼ご飯が降ってくるんだもん。
か「ごめんごめん。おっことしちゃった。
  あ、そうだ、お昼はもう食べたの?」
ぺ「いや、アタシはまだ。かもめさんは?」
か「私もいまから」
ぺ「お昼にする?」
か「うん、だから、一緒にどうかなって思って」
ぺ「いいの?」
か「そんなに大きくないんだけど、イワシさんふたぁつ捕まえられちゃったから。」
ぺ「すごいね。」
か「たまたまよ、たまたま。
  だけど、神様からこういうステキなプレゼントをもらったら自慢したくなるでしょ?」
ぺ「うん、わかる」
か「だから、おすそわけ。どうぞ。」
ぺ「ありがと。」
か「この前、迷惑かけちゃったから」
ぺ「いいのにー。あれは……あれもたまたまだって」
か「だけど、わざわざとりにいってくれたでしょ?
  私は感謝してるんです」
ぺ「おなかすいちゃったら、空も飛べないでしょ?」
か「ありがとうございます」
ぺ「いいのいいの。気にしないで」
か「どうぞ、私もここでお昼にするから。」
ぺ「じゃあ、お言葉に甘えて。いただきます。よいっしょっと。」
 *魚丸呑みのみ2つ
ぺ「うん、おいしーい」
か「うんうん。おいしーい」
ぺ「おいしーね」
か「よかった〜。」
ぺ「アタシね、ちょうどいまの季節のイワシが一番好きなの。」
か「ホント!よかった〜」
ぺ「秋になると、なんか、油っぽくて、ちょっとしつこい感じじゃない?」
か「あー、わかるわかる! こぶりだけど、おいしいの、ね!」
ぺ「おいしかった〜」
か「よかった〜」
ぺ「うん、ごちそうさまでした。」
か「いえいえ、お粗末様でした。」
ぺ「ねぇ、今日ってやっぱり空飛ぶの気持ち良い?」
か「うん、昨日までの雨が嘘みたい。
  今朝の海はどうだった?」
ぺ「今朝の海はね〜」
か「うん」
ぺ「ちょっとまだ波が高かったけど、珊瑚のみんな、気持ちよさそうにしてた。」
か「そっかぁ。」
ぺ「海も、たぶんね、今日の夕方あたりがちょうどいいかもしんない。
  潮の流れがおちついてくれると思うし。」
か「ねぇ、ひとつきいていい?」
ぺ「なに?」
か「ペンギンさんは、空を飛んでみたいと思ったことはないの?」
ぺ「空?」
か「うん」
ぺ「うふふ。ある。めっちゃある。
  毎日、ステキだなぁ〜って思ってここから見てたりする。
  かもめさんは空を飛ぶのが好き?」
か「私?」
ぺ「うん」
か「そうねー、嫌いじゃないけど……。
  物心ついたときから、私は空を飛んでて。飛んでるのが普通だから」
ぺ「いいなぁ〜」
か「飛んでてフツウだし、私のことを飛ぶのが上手だっていうカモメもいるけど。
  私はぜんぜん。まだまだで」
ぺ「上手に飛んでると思うけど?」
か「ん〜、なんて言ったらいいんだろ。
  うまいうまくないで言ったら、下手じゃないんだと思う。
  だけど、うらやましいなぁって思うかもめさんがいるのよね」
ぺ「うらやましいの?」
か「うん。なんて言うか、すごく楽しそうなの。
  どうしてかわからなんだけど、すっごく楽しそうに飛ぶの。
  いっつもにこにこしてて。
  ほら、あそこ。きょうもあそこで、見たらすぐわかる」
ぺ「あぁ、あそこ?」
か「そう。彼。いつも楽しそうに飛ぶの。
  それが、私にはできなくて。
  なのに、彼ったら、「どうやったら上手くなれるのかな?」なんて聞くの。」
ペ「あなたはなんて言ったの?」
か「『わかんない、なんとなく』って言っちゃった」
ぺ「なんとなく?」
か「だって、うまく言えなくて。
  確かにコツみたいなのはあって。」
ぺ「風って見えるらしいってホント?」
か「風?見えるって言えば見えるのかも。
  具体的に色が付いてるわけじゃないけど、
  海の上を飛ぶときはすごくわかりやすいかも」
ぺ「わかりやすいの?」
か「風の方向に、波がゆらめくでしょ?
  だから、いくつか風の波が来てるときって、水面にスジみたいな流れの帯が見えるの。
  だから、なんとなくわかる。
ぺ「風ってそんな風にみえるの?」
か「なんとなくね。森でも同じように風が吹いてくるけど、大きな杉の木のおじいちゃんなんかは、わざとタイミングずらして揺れてたりするから、難しいかも」
ぺ「えーでも、なんか気持ちよさそう」
か「風をつかめたときは気持ちいいかも。
  だから、もっと空を飛ぶことを好きになりたい」
ぺ「いいなぁ〜。
  アタシ、空を、いつか飛んでみたいの。
  でも無理でしょ?アタシペンギンだし」
か「でも、海を泳ぐのは得意でしょ?」
ぺ「まぁね。わりと得意かも。
  あ、そうそう、」
か「なに?」
ぺ「逆にー、かもめさんは海をパタパタ飛んでみたいとはおもわない?」
か「海を飛ぶの?」
ぺ「そう。海を飛ぶの。」
か「えー、でも、空を飛ぶのより難しそう」
ぺ「まぁね、そのふわふわの羽じゃぁ確かに無理かもしんない。
  アタシみたいな体でさ、海に入りやすいかっこで、っていうのだったらどう?」
か「あー、それはステキかも。うん。
  でも、あれ、海のなかってあんまり良く見たことがないの。
  うまく見えないのよね。」
ぺ「そうなの?」
か「泳いでる魚の群れとかだったら、影みたいにみえるんだけど。なんとなくね。
  でも、今日もイワシの群れとくじらさん間違えそうになったし」
ぺ「えーそうなの?」
か「そうなの。空からみるとそんな感じ。
ぺ「海のなかだったら、ぜんぜん違うよ?くじらさんと、イワシちゃんたち。」
か「へぇ〜、どんな感じなの?」
ぺ「くじらさんだったら、ふつうに挨拶するし」
か「あぁ、そっか。そうなんだ〜。じゃあ、海のなかってどんな感じに見えるの?」
ぺ「海のなか?」
か「そう、泳いでるときとか」
ぺ「ん〜、そうね〜。
  夜の世界に似てるか。」
か「夜の世界?」
ぺ「そう、夜の世界。
  星がキラキラしてて、
  月が大きくキラってしてる。
  鯨の背中がおおきくでーんってキラキラ光ってて、珊瑚のみんなは好き勝手いろんな色で輝いてる。
  ヒトデもいるし、カニのおばさんも、ときどきハサミを振ってくれる。
  ダイオウイカのじさんはわざと墨をはきだしたりしてたし。
  いつだったっけ、いるかさんに息継ぎのコツを教えてもらったし」
か「にぎやかなのね。」
ぺ「うん。たぶん海は空よりぜんぜんにぎやかかも」
か「いいなぁ。」
ぺ「それに、水面から差し込んだ光がオーロラみたいに輝くの。
  いくつもいくつも柱みたいになってく。
  遠くまで、ずーーっと遠くまできらきら揺れるオーロラが続いてくの。
  アタシが一番好きなのは夕方」
か「夕方?」
ぺ「うん。
  空がオレンジ色になってくでしょ」
か「うん」
ぺ「海の中のオーロラも、オレンジ色にかわってくの。
  斜めに差し込む光のオーロラが、いくつもいくつもつづいてくの。
  はじめは白かったオーロラが、だんだんオレンジにゆっくり変わって、
  揺れながら輝いて、細い帯に変わってく。
  オーロラが細く小さくなっていくんだけど、海面だけ、最後にオレンジ色に変わってく。
  すっごく静かな世界。」
か「わぁー、ステキかもー。」
ぺ「でしょ?海もいいでしょ?」
か「うん。すっごくうらやましいかも。」
ぺ「ん〜、そっかぁ。あ、でもあれかも。今のアタシの気持ちって、それかも」
か「それ?」
ぺ「そう、今のかもめさんの気持ち。うらやましーーーって感じ」
か「あ〜、」
ぺ「一緒でしょ?」
か「そうね」
ぺ「だから、すっごく空飛んでみたいの。
  でも、あれじゃん?どーせアタシには無理だし。
  なんかすっごいことできる誰かに頼んで願い事かなえてもらわないと、かないっこないんだけど。なんてね」
か「私たち、住んでる世界がずいぶんちがうのかもね」
ぺ「ん〜、どうだろ?世界は一緒なんじゃない?」
か「世界は一緒?」
ぺ「うん。見え方がなんとなく違うだけ。」
か「見え方……。」
ぺ「そ。見え方が違って、だけどその見え方の違いを、こうやって話して聞ける。
  それもまたステキじゃない?」
か「そうね」
ぺ「結局、同じ世界だもん」
か「いいこと言うわね」
ぺ「思ったことをいっただけよ」
か「私は、ペンギンさんがうらやましい。
  だから、ペンギンになっちゃいたい」
ぺ「うん。悪くないわ。
  だけど、アタシも、かもめさんになって、空からこの世界を見てみたい。
  素直にそう思える」
か「お互いさまなのね」
ぺ「となりのイワシはなんとやら、かもね」
か「そうね」
 *遠くでカモメが鳴く。
ぺ「行かなくていいの?」
か「そろそろ行かなきゃ。心配かけちゃう」
ぺ「お昼ご飯、ありがとね」
か「ううん、また、持ってくるわ」
ぺ「今度アタシも持って行くよ。
  一緒に食べよ?」
か「うん。また海の話きかせて。」
ぺ「もちろん。空の話も」
か「うん。ありがと。またね」
 *かもめが飛び立つ
 *遠くまでゆっくりと羽の音がして、鳴く

ペ(N)
  「その日はずいぶんと空が穏やかで、青く透き通ってた。
  雨が続いてた季節の終わりに、だけど、夏の始まりを予感させる、そんな空だった。
  見上げた空の向こうに、規則正しく飛び回るカモメたちの群れが見える。
  群れの中に一羽のかもめが舞い戻る。
  もしも、空を飛べるなら、アタシはあの空に羽ばたきたいと願ってしまう。
  どんなに願っても、叶わないものがある。それはちゃあんとわかってて。
  それに、彼女だって海の世界を知ることはできない。
  それが、アタシたちの運命ってこと。」

 *お腹がなる。

ぺ 「さてと、もうちょっとだけおやつ食べてこようかな。
 *ペタペタペタ
ぺ 「んしょっと」
 *ザッパーン。飛び込む音
  
 *無音の空間で
ペ 「海の中の静かな世界。
   透き通る、空のような海の中。
   光のオーロラが差し込んで揺らめいて。
   アタシは、今見てるこの世界を、
   大好きなこの、青くてキラキラしたこの世界を、この小さな羽で、羽ばたいていく」

 *フェードアウト


キャスト
・ ペンギン ???
・ かもめ ???
以上でお送りしました。


 *Ending M





※使用している記号について
・* …… シーン説明 (場面の状況を描いています)
・SE …… サウンドエフェクト 効果音
・M …… 音楽 挿入曲  (文色では、演出上必要な場合にのみ記載。たいていの場合、音響の判断でつけるようにしています)
・(N) …… ナレーション  (文色では、演出上、モノローグ(独白)のような場合もある 今回の物語ではモノローグ的な演出)
・F.O. …… フェードアウト (効果音に関する指定)