ボイスドラマ 脚本

 公開日時  2013.10.23

#01 『月の光に未来を重ねて』


田中翔子:
後藤優子:



 *温泉。露天風呂。ちゃぽーん。
  ふたりざぶーん。ざぶーん。 っていう流れ。

翔子「あー、なんかひさしぶりー。」
優子「露天風呂いいわね〜」
翔子「ふあーーー、いきかえるーーー」
優子「あーーーー、いいお湯〜〜〜」
翔子「やっぱり、温泉と言えば熱海でしょ!」
優子「もし、今日みたいに電車だったら、箱根とか、伊豆のあたりにもあるし。
    北にのぼっていくなら鬼怒川温泉とか、草津温泉とかもいいよ」
翔子「あー、行きたいトコいっぱいだー」
優子「日本全国津々浦々、田舎の村とか、温泉めぐりなんてのもいいんじゃない?」
翔子「あー、いいかもー」
優子「次の温泉旅行も計画しなきゃね」
翔子「うん。 あ、あそこ、月でてるよ」
優子「あ、ほんと、今夜は満月なのね」
翔子「月って温泉あるの?」
優子「え?」
翔子「月に温泉あったらさー、」
優子「うん」
翔子「満点の星空見ながら入るのかな?」
優子「あ〜、それ、ステキかもね」
翔子「あ、そうだ。 ねぇ?ねぇ、ゆうこぉ?」
優子「なに?」
翔子「村長ってどうやったらなれるの?」
優子「え?なに?」
翔子「村長って、どうやったらなれるの?」
優子「どこの?」
翔子「別に、どこの。ってわけじゃないんだけどさー。
    なんか、あこがれるじゃん?
    そんちょー! そんちょー!って」
優子「あ〜、いいお湯。疲れふっとぶわー」
翔子「ちょっとー、聞いてる?」
優子「ん?どうしたの?翔子お嬢さま?」
翔子「だーかーらぁー、村長ってどうやったらなれるのーって聞いてるの!」
優子「そんちょーは今日も元気でちゅね〜〜はーい、よちよぉ〜ち、いいこね〜」
翔子「んもぅ」
優子「あはは、ごめんごめん。翔子がへんなこと言い出すから。
    で?なんだっけ?村長になりたいんだっけ?
    ん〜(考えて)、あ!(良い事と思いついた感じで)
    ねぇ、翔子は、どんな村の村長になりたいの?」
翔子「どんな村って?」
優子「たとえば、アマゾンの原生林の奥地にある、未開の森のずっと奥にある、縄文時代みたいな村とか〜」
翔子「ん〜」
優子「こういう、壺みたいな土器とか手づくりしてる感じの?」
翔子「ん〜、そこまでサバイバルに無理したい感じじゃないかも」
優子「ん〜、じゃあ、超近代的な高層ビルの、地上2867階から、2960階までに生活する住民および、
    ハイテクノロジーファームにおける野菜の収穫を管轄し、地域の安全を監督する村長?」
翔子「え?なに?」
優子「あ、ピンとこない?」
翔子「にせんはっぴゃくなん階って、そんなビルあるの?」
優子「わるわけないじゃーん、けど、アタシね、きっと、きっと、近い将来実現すると思うの。」
    (男性声で)「ゆうこ、ほら、みてごらん、ここから見る夜景、きれいだろ?」
    (女性声で)「まぁ、ステキ、ねぇ、あそこで輝いてるのって、もしかして?」
    (男性声で)「そうだよ、気づいた」
    (女性声で)「もしかして、ホントに!」
    (男性声で)「そうだよ、大気圏で燃え尽きる宇宙の『ゴミクズ』さ。」
翔子「ちょちょちょちょっと?」
優子「(男性声で)「その向こうに見えるのが、火星の砂漠だよ。ほら、なにもないだろ?」
優子「(女性声で)「うふ、そうね、ステキー」
翔子「おーい、ステキじゃねぇよ!おーい、優子ぉ〜もどってこーい、もしもーし」
優子「はい、優子です。うふっ」
翔子「だ、大、丈夫?」
優子「うん、大丈夫よ?」
翔子「なんか、ひとりで行ってはいけない世界にトリップしちゃったのかと思って」
優子「そんな感じの村長はいかが?」
翔子「え?えっと、とりあえず、今はいいや」
優子「あら、じゃあ、近い未来に期待しちゃう系女子ね?翔子ったら、したたかなんだから。」
 *バシっ たたく
翔子「いたっ」
優子「ん〜、どんな村長がいいの?」
翔子「ん〜、なんていうか、もっとふつーのがいい」
優子「どうぶつの住人しか住んでいない村で、魚つったり、虫を追いかけたり、自分の好きな家具でおへやをかざったり、あたらしい髪型だって自由自在!的な?」
翔子「わー、いいなぁーたのしそー」
優子「そういうゲームなら出てたよ? こういう、持ち運びできる大きさで、ぱかってあけたら、画面がふたつ付いてて、3Dにもなるんだってー!」
翔子「あー、それ。。。」
優子「えー、4800円です。しかも、なんと!2012年11月8日ダウンロード配信開始!
    じゃあ、8年後くらいの誕生日に買ってあげるねー。2020年の誕生日。」
翔子「それはいい、もう持ってるし」
優子「じゃあ、いいじゃん。もう、村長じゃん!わー、ステキー、そんちょーさまー」
翔子「そーじゃなくてー」
優子「(突然真顔になって) いいこと?翔子ちゃん?」
翔子「え?あ、はい」
優子「現実と、バーチャル、つまり仮想世界の区別がつかなくなるっていうのは、一種の病気なの。
    あなたが生きているのは、ここ、日本。にほんっていう国に生きて、酸素を吸って、二酸化炭素をはいてるの。
    地球という重力に、絶えずさらされながら、人間社会という荒波にもまれながら、 
    あなたはそれでも生きていくの。生きていかなくてはならないの。
    気を確かに持って。
    つらいのはわかるわ。だけど、だけどね、あなたは、田中翔子なのよ。
    他の誰でもないわ。唯一無二の、田中翔子、あなたなのよ」
翔子「あ、はぁ。」
優子「私も、火星人と恋をしてみたい、とか、」
翔子「え?」
優子「土星人のほうがステキかしら。とか」
翔子「土星?」
優子「だけどやっぱり、コンビニで買うなら、ゼリーより、プリンかしら?とか」
翔子「え?プリン?」
優子「いろいろ人生悩んで生きてるの。
    けど、ね、翔子ちゃん」
翔子「は、はい」
優子「こうやって、温泉めぐりして、肩のちから抜いて。
    うっぜぇ上司の文句くらい言ったらいいじゃない。ねぇ?そう思うでしょ?」
翔子「えっと、はい」
優子「だから、自信をもって。
    きっと、夢はかなうから、だから、これを、これを持っていくといいわ。
    はい、」
翔子「はい、ってこれ、タオルだけど」
優子「あー、もう、無理」
 *どさっっという音。優子が倒れる。
翔子「ゆ、優子? ちょっと、どうしたの?大丈夫?大丈夫?顔、真っ赤だよ、ちょっと、大丈夫?ゆうこーーーー」
 *エコーかけてふぇーどアウト


<場面転換>
 *音楽とかかかってる感じで。静かにはいってくる
翔子「すみません、なんか、のぼせちゃったみたいで、ありがとうございました。
    あ、気が付いた?」
優子「こ、ここ? どこ?」
翔子「大丈夫?」
優子「アタシ、どうしたの?」
翔子「温泉でのぼせたのよ。急に倒れるからびっくりしちゃった」
優子「あ、ごめん」
翔子「だいじょうぶそう?」
優子「うん。」
翔子「よかった」
優子「なにか、変なこと言ったりしてなかった?」
翔子「変なこと?」
優子「うん、超高層ビルとか、村長とか」
翔子「うん、別にへんな事言って無かったよ。」
優子「よかった」
 *足音、コツーン系のヒールっぽい音(翔子が部屋の窓に近寄り、
 *カーテンをあける
翔子「ねぇ、優子。
    ここの部屋、すごいんだよ。ここから見る夜景、とってもきれいなの。
優子「ごめん、ちょっとまだ、」
翔子「ちょっと落ち着いたら、見るといいわ。
    地球とは思えないって、2930階の部屋なんだから。
    優子が倒れて眠ってしまってからしばらくして、病院のクリーンルームで、スリーピングを行ってもらったの。
    半永久凍結技術で、細胞の凍結。簡単にいうと、冬眠状態。
    可能になるなんておもわなかった。
    けど、優子は目を覚ました。」
優子「え?」
翔子「アタシも、ほんの数時間前に。
    優子が目を覚ます2日前に設定して。
    見た目かわらないでしょ?」
優子「え?どういうこと、翔子?」
翔子「あたしたち、4025年生きてるの。
    未来まで、ほんの先の未来まで、来ることができたのよ。
    (男性声で)「ゆうこ、ほら、みてごらん、ここから見る夜景、きれいだろ?」
    (女性声で)「まぁ、ステキ、ねぇ、あそこで輝いてるのって、もしかして?」
    (男性声で)「そうだよ、気づいた」
    (女性声で)「もしかして、ホントに!」
    (男性声で)「そうだよ、大気圏で燃え尽きる宇宙の『ゴミクズ』さ。」
優子「ちょちょちょちょっと?」
翔子「(男性声で)「その向こうに見えるのが、火星の砂漠だよ。ほら、なにもないだろ?」
翔子「(女性声で)「うふ、そうね、ステキー」
 *優子が飛び起きる。
 *スリッパの音
 *カーテンを開ける
優子「え?」
翔子「うそでしたーーーー」
優子「もーーー、びっくりするからやめてよー。
    目の前に、熱海駅って。しかも、ホテルの3階じゃんここーー。地面めっちゃ近いし」
翔子「どう?迫真の演技じゃない?」
優子「もー、びっくりさせないでよ」
翔子「はい、お茶でも飲んで」
優子「ありがと」
 *急須でお茶を注ぐ。
翔子「はい、どうぞ。」
優子「ありがと。 あー、おちつく。」
 *急須で翔子が自分のゆのみに注ぎ終わる。
翔子「ねぇ、優子?」
優子「なに?」
翔子「ここ、月の裏側にあるアタシの村、宇宙コロニーにつくった、あたみ。なのよ」

 *音楽カットアウト


 *エンディング用音楽開始 (フェードイン)


『月の光に未来を重ねて』
キャスト
田中翔子 ・・・・・
後藤優子 ・・・・・

以上でお送りしました。