ようこそ広島へ

ようこそひろしまへ





   あとがき

お聞きくださってありがとうございます。
この作品は、2012年春に開催された「M3」というイベントへの出展の為に企画されたものです。

文色としても、これまでになく長編の作品となりました。
全てを通して聞くと120分近くなります。
正直、企画をスタートさせた段階では実現できるとは思いませんでした。
というより、書き手の私としても、もう少し短い作品をイメージしていましたが、お話を書き連ねていくと、描きたいシーンが多くなってしまいました。
「M3」という特別なイベントに向けて制作するというハードルは、私たちにとってもとても特別な経験になりました。

「M3」へ出展するにあたって制作した兄弟作品。
長編ボイスドラマ 『Flight』〜青空にかかる虹をめざして〜を同時期に制作しました。




  『おだからのごあいさつ』
  時間:32分47秒 (30.0MB)

  

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   ***


主となるテーマは、『Flight』、『ようこそ広島へ』のふたつの作品双方にとって、
「ようこそ」 というこの言葉に集約されるかもしれません。

初出展となる特別なイベントの日を迎えるにあたって、まだ、僕たち 文色 を知らない方々へのご挨拶としての作品です。
そして、この『ようこそ広島へ』という作品は、僕(脚本担当:おだ)にとっては、
原点回帰+挑戦。という節目の作品になりました。

広島弁での作品は、初めてというわけではありませんが、
なかなか「書き著せない」表現でした。
けれど、話し言葉を書き連ねてボイスドラマに仕立てていくことに関して言うならば、
僕の原点は「広島弁」です。
生まれてからず〜っと、広島弁ですから。
全体を通して気をつけたことは、極力「現代版の広島弁」を再現するということです。
もちろん、意識的に濃い色に演出した言葉遣いもありますが、
等身大の、自分たち世代が使う「広島弁」を記すことを意識しました。
標準語に親しんだ中で、微妙にイントネーションが「広島独特」という感覚を大切に。
それが、文色として、脚本担当のおだとしての挑戦でした。


   *** 




   ここからは、話中のエピソードなどを取り上げながら記載していきます。
   お聞きになった後にお読みいただいたほうが良いかもしれません。

   ご注意ください。




   *第1話*

物語の始まりです。
新幹線から降りて、噴水のある在来線口の広場まで。
音響担当の友鐘くんにお願いしたのは、その再現でした。
今回の挑戦としても、風景描写がキーワードでしたので、冒頭部分からチャレンジしっぱなしだったかもしれません。

第1話で描きたかったのは、
大野さんの台詞。

「斉藤さん、私のことバカにしてます?」

この言葉かもしれません。
地方出身者が抱える、コンプレックスみたいなもの。
僕も大学入学をきっかけに東京へ移住したのですが、
なんとなく、卑屈な気持ちをもっていました。
重度ではないんですが、なんとなく、「遅れている」ような感覚。

そこからのスタート。
自分に重ねている部分もあったのかもしれません。
だからこそ、物語のはじまりも、
ちょっとよそよそしいふたりと、疑念と、コンプレックスだったんです。


    ***


   *第2話*

第2話で描きたかったことは、この物語のテーマの部分です。
おだが演じてしまっていますが、お好み焼屋のおやじの台詞。

  「なんちゅーたらええかのぉ。
   同じ箱の中にずっとおったら、全部が全部アタリマエんなる。
   特別なもんがそこにあっても、なかなか気付けんようなってしまうけぇ」


そして、大野さんに尋ねる質問。

「好きですか?」



    ***


   *第3話*

第3話では
「ようこそ、宮島へ」
タイトルをわざと変えてみました。
こういう冗談みたいなやり方も初めての試みです。
さすがに今までタイトルを差し替えたことはありませんでした。

自分が知っているものを、どこまで伝えられるか?
第3話はチャレンジでした。
数年ぶりに、宮島へ遊びに行ったとき、「ああ、すごいんだこれ」って思えたんです。
幼い頃から、遠足で行ったり、友達といったり、おばあちゃんと行ったり。
宮島は、そこにあって当たり前。
大きな鳥居は、そこにあるもんだ。
そういう価値観で、眺めていただけの自分に気づいたんです。
この物語を書いたときの風景描写に関しては、実物を見ていません。
見ながら書いたのではなく、思い出しながら書きました。
自分の中にある、幼い頃に見た景色とか、いろんな「宮島」の景色を思い出しながら描きました。
ちょっと、美化して。
まぁ、なんていうか、幼稚園の先生を思い出すみたいに。

初めて見た。
斉藤さんの設定を借りて、描いてみました。
細かいところを忘れている。くらいの瞬間が、一番美しく表現できるかもしれませんね。


「一緒に何か見つけましょう」 無力だけど。
一人ではなにもできないかもしれない。
この言葉。
文色というサークルは2人で始めました。
けれど、数年間の活動の中で、多くの人に出会えました。
仲間が増えていきました。
僕は、書くことと、下手なこと(芝居と呼べないくらいの声出し)しかできません。
だけど、仲間のちからを借りて、一緒にひとつの制作をすることで、
新しい作品をつくることができます。
その心地好さも知りました。


    ***


   *第4話*

第4話の冒頭部分ですが、
ひとつ小さな表現としては、「和服」への拒否感です。
「鹿に着物着てもらったら?旅館なんだし」っていう提案を、大野さんはスルーしてしまうんです。
あからさまに「拒否」させたくなかったので、別の話題にという方法でスルー。
だけど、こういう話題の拒否への対応の仕方っていうのは、実際やってるんじゃないかな?とか思ってます。
この時点では、大野さんはジーンズにTシャツです。
――旅館だから。
――和風だから。
そういう、固定観念への拒否感です。
大野さんはそれを持っています。

そして、続くロープウェーでの会話。
呼び方が「さなえ」になっていきます。
壁を、意図的に壊していく。
演技かもしれない、装飾かもしれない。
だけど、自分と向き合う一歩目。
自分が、少しだけ、オープンになること。

「好きになれそう?」
「たぶん、好きになれそうな気がします。広島も。」

好きになることで、何かを見つけるんだと思う。
僕は、文色の活動で、それを見つけました。
いやぁ、ボイスドラマつくるのって、たのしいんですよ、うん。


    ***


   *第5話*

第5話は、心の衝突。
私は今まで、こういう、ケンカみたいなシーンを描くのが、苦手というか、
今まで避けてた感じでした。
けど、この長さを描けて、ようやく初めて手がけられました。

広島の教育の話。ちょっと盛り込んでいますが。
他県の人って、広島の学校ほど、戦争について教わってないんです。
これは事実として。
もちろん、広島のこどもたちが、そういうトラウマを抱えるわけではありません。
けど、広島のこどもたちも、長崎や、沖縄、東京空襲、その他の地域の歴史を細かく知っているわけでありません。
だけど、個人的に思ったのは、
その、教育として教わる部分の歴史が、地域によって差があるということや、
そういう部分が近年軽視されているという事実には、不安があります。
ここで書くような批判ではないかもしれませんけど、
政治家になっておられる方々の「平和」への価値観に偏りがあることや、
広島市民が思う平和への大切さとの乖離があるのは、あまり良いことではないと思っています。
その原因は、平和教育の地域差だと思います。


    ***

   *最終話*

斉藤「いやいや、あー、でも、自慢でもなんでもなく、僕だったからできたっていうのは事実かもしれない」
大野「斉藤さんはすごいですよ」
斉藤「あー、えっと、僕はすごくないです。
   だからこそ、すごくない伝え方ができたんだと思うんです。
   自分の目で見て、自分の耳で聞いて。
   自分の鼻で臭いをかいで、自分の口で、味わう。
   自分の手で触れて、自分の足で歩いて」

大野「斉藤さん、もう一度、見直してみます。
   自分になにができるんか。自分が好きになれそうなこと探します」
斉藤「自分がやりたいと思うこと、純粋に、好きだからしてしまうこと。
   そういうの、追い求めるべきだと思う。
   すっごく、自分勝手なんだけどさ、
   すっごく、自分中心なんだけどさ、
   すっごく、自分の目線で、自分の感覚で、
   だけど、誰かを想ってそれをやったんだとしたら、
   きっと、意外とちがう誰かも喜んでくれるから」


伝えたいのは、この部分ですね。
あとがき、とっても長くなりました。
読んでくださってありがとうございます。

僕は、ボイスドラマを作っていて、とっても楽しい。
だからこそ、続けていられる。
僕が書くことで、仲間に出会えた。
僕が書くことで、友人も楽しんでくれる。
僕は、楽しい。嬉しい。
聞いてくださってありがとうございます。
聞いてくださったあなたがいてくれるから、僕は次の作品に向かえるんだと思います。


斉藤「だから、自分が一番幸せにならないと」


ね。





***

*エピローグ*
兄弟作品のこちらも、どうぞよろしく。


長編ボイスドラマ 『Flight』〜青空にかかる虹をめざして〜
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そして、
文色に来てくださってありがとう。
文色の作品を聞いてくださってありがとう。
文色の作品を楽しみにしてくださってありがとう。


僕の文字と言葉と、僕の音響と演出と、僕らの作品の色を好きになってくれてありがとう。


だからこそ、この作品が、原点回帰+挑戦だったんだと思います。



ようこそ、文色へ。


これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

2013.05.25
文色 脚本担当 おだゆうすけ